第17巻3909

橘は 常花にもが 霍公鳥 住むと来鳴かば 聞かぬ日なけむ

 

たちばなは とこはなにもが ほととぎす すむときなかば きかぬひなけむ

意味:

橘の花に 常に花が咲いて ホトトギスが 住む所に飛んで来て鳴けば 声を聞かない日はなくなるだろう

作者:

大伴書持(おおとものふみもち)大伴旅人の子で大伴家持の弟

第17巻3910

玉に貫く 楝を家に 植ゑたらば 山霍公鳥 離れず来むかも

 

たまにぬく あふちをいへに うゑたらば やまほととぎす かれずこむかも

意味:

節句の薬玉を作るための センダンを家に 植えたならば 山ホトトギスが 離れずに来るかも

作者:

大伴書持(おおとものふみもち)5月の節句には、センダンの実と香り袋を五色の糸で貫き装飾品として、スダレや柱に飾ったという。これを作るときホトトギスの鳴き声が必要だったという。この薬玉を作る行事については、万葉集で繰り返し歌われている。

センダン

センダンの実(秋になり葉が落ちても実だけが残ります)

 

第17巻3911

あしひきの 山辺に居れば 霍公鳥 木の間立ち潜き 鳴かぬ日はなし

あしひきの やまへにをれば ほととぎす このまたちくき なかぬひはなし

意味:

山すそを長く引く 山辺に居れば ホトトギスは 木の間に立ったり隠れたりで 鳴かない日はない

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは橙色の橘が初めて咲き、ホトトギスはひらひらと飛んで鳴く、この春から夏にかけて特に感じやすく、3首の歌を作って、これによって鬱血した心を散らすのみとなっている。3首の歌とは、3911、3912、3913です。

 

第17巻3912

霍公鳥 何の心ぞ 橘の 玉貫く月し 来鳴き響むる

 

ほととぎす なにのこころぞ たちばなの たまぬくつきし きなきとよむる

意味:

ホトトギスは どんな気持ちなのか 節句の薬玉を作る月に 来て鳴き声を響かせるのは

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは橙色の橘が初めて咲き、ホトトギスはひらひらと飛んで鳴く、この春から夏にかけて特に感じやすく、3首の歌を作って、これによって鬱血した心を散らすのみとなっている。3首の歌とは、3911、3912、3913です。

 

第17巻3913

霍公鳥 楝の枝に 行きて居ば 花は散らむな 玉と見るまで

 

ほととぎす あふちのえだに ゆきてゐば はなはちらむな たまとみるまで

意味:

ホトトギスよ センダンの枝にいて 花を散らすな センダンに玉の実が付くまで

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは橙色の橘が初めて咲き、ホトトギスはひらひらと飛んで鳴く、この春から夏にかけて特に感じやすく、3首の歌を作って、これによって鬱血した心を散らすのみとなっている。3首の歌とは、3911、3912、3913です。

第17巻3914

霍公鳥 今し来鳴かば 万代に 語り継ぐべく 思ほゆるかも 

 

ほととぎす いましきなかば よろづよに かたりつぐべく おもほゆるかも

意味:

ホトトギスが ちょうど今来て鳴けば 永遠に 語り継ぐべきだと 感じられかも知れません 

作者:

田口朝臣馬長(たぐちのあそみうまをさ)この人については伝未詳です。タイトルはホトトギスを思う歌となっています。

 

第17巻3916

橘の にほへる香かも 霍公鳥 鳴く夜の雨に うつろひぬらむ

 

たちばなの にほへるかかも ほととぎす なくよのあめに うつろひぬらむ

意味:

橘の 匂う香りかも知れません ホトトギスの 鳴く夜の雨に 次第に消えてゆくのは

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは十六年四月五日に一人住まいの平城の故宅で作る歌となっています。

第17巻3917

霍公鳥 夜声なつかし 網ささば 花は過ぐとも 離れずか鳴かむ

 

ほととぎす よごゑなつかし あみささば はなはすぐとも かれずかなかむ

意味:

ホトトギスの 夜の鳴き声が懐かしい 網で生け捕りにすると 花の季節が終わっても ここから離れず鳴き続けるでしょう

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは十六年四月五日に一人住まいの平城の故宅で作る歌となっています。

 

第17巻3918

橘の にほへる園に 霍公鳥 鳴くと人告ぐ 網ささましを

たちばなの にほへるそのに ほととぎす なくとひとつぐ あみささましを

意味:

橘の 匂いのする庭園に ホトトギスが 鳴いていると人が告げて来た 生け捕りにする網を仕掛けましょう

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは十六年四月五日に一人住まいの平城の旧宅で作る歌となっています。

第17巻3919

あをによし 奈良の都は 古りぬれど もと霍公鳥 鳴かずあらなくに

 

あをによし ならのみやこは ふりぬれど もとほととぎす なかずあらなくに

意味:

青丹が素晴らしい 奈良の都は 古くなってしまったが 以前からのホトトギスは 鳴かないことはありませんよ   

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは十六年四月五日に一人住まいの平城の旧宅で作る歌となっています。