第10巻1950
霍公鳥 花橘の 枝に居て 鳴き響もせば 花は散りつつ
ほととぎす はなたちばなの えだにゐて なきとよもせば はなはちりつつ
意味:
ホトトギスが 橘の花の 枝に居て 鳴き騒げば 花は散ってしまうよ
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1951
うれたきや 醜霍公鳥 今こそば 声の嗄るがに 来鳴き響めめ
うれたきや しこほととぎす いまこそば こゑのかるがに きなきとよめめ
意味:
いまいましい 憎らしいホトトギスよ 今こそは 声がかれるまで 来て大声で騒げ
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1952
今夜の おほつかなきに 霍公鳥 鳴くなる声の 音の遥けさ
こよひの おほつかなきに ほととぎす なくなるこゑの おとのはるけさ
意味:
今夜の ぼんやりしている ホトトギス 鳴く声は 音が遠く隔たっています
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1953
五月山 卯の花月夜 霍公鳥 聞けども飽かず また鳴かぬかも
さつきやま うのはなづくよ ほととぎす きけどもあかず またなかぬかも
意味:
さつきの山に 卯の花が咲く月夜の今宵 ホトトギスの声を 聞いていると飽きない また鳴くかも知れないので
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1954
霍公鳥 来居も鳴かぬか 我がやどの 花橘の 地に落ちむ見む
ほととぎす きゐもなかぬか わがやどの はなたちばなの つちにおちむみむ
意味:
ホトトギスよ こちらに来て居ついて鳴かないか 私の家の 橘の花が 地に落ちてしまうのを見たよ
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1955
霍公鳥 いとふ時なし あやめぐさ かづらにせむ日 こゆ鳴き渡れ
ほととぎす いとふときなし あやめぐさ かづらにせむひ こゆなきわたれ
意味:
ホトトギスよ いたわる時がありませんが アヤメを 薬玉にするにする日(節句)には たくさん鳴いておくれ
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1956
大和には 鳴きてか来らむ 霍公鳥 汝が鳴く ごとになき人思ほゆ
やまとには なきてかくらむ ほととぎす ながなくごとに なきひとおもほゆ
意味:
大和には 鳴いた後で来てください ホトトギスよ あなたが鳴く度に 亡くなった人を思い出します
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1957
卯の花の 散らまく惜しみ 霍公鳥 野に出で山に入り 来鳴き響もす
うのはなの ちらまくをしみ ほととぎす のにいでやまにいり きなきとよもす
意味:
卯の花が 散ってしまったのを惜しみ ホトトギスは 野に出て山に入り 飛んで来て鳴き騒ぎます
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1958
橘の 林を植ゑむ 霍公鳥 常に冬まで 棲みわたるがね
たちばなの はやしをうゑむ ほととぎす つねにふゆまで すみわたるがね
意味:
橘の 林を植えて作ろう ホトトギスが 冬まで一年中 棲み続けられるように
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1959
雨晴れの 雲にたぐひて 霍公鳥 春日をさして こゆ鳴き渡る
あまばれの くもにたぐひて ほととぎす かすがをさして こゆなきわたる
意味:
雨が晴れて 雲と一緒に ホトトギスは 春日を目指して 越え鳴き渡ります
作者:
この歌の作者は不明です。春日という場所は、たくさんりますが、春日山などが考えられます。