14.1 万葉集 2

鴎(カモメ)の歌は万葉集に一つしかないが、この鴎の歌は多くの人に親しまれているで、国や民を思う天皇の気持ちが凝縮されているような歌です。カモメの動作としては「立ち立つ」となっている「あちこちで一面に立つ、次々に飛び立つ」という意味であるが、これまでの鳥になかった表現で、広々した空間を感じさせる良い表現だと思います。それにしても、こんな広々した空間を感じさせるカモの歌が一つしかなかったのは残念です。ダイサギの歌と同様に貴重な歌になっています。

カモメ

第1巻2

1    大和には 群山あれど      やまとには むらやまあれど

2    とりよろふ 天の香具山     とりよろふ あめのかぐやま

3    登り立ち 国見をすれば     のぼりたち くにみをすれば

4    国原は 煙立ち立つ       くにはらは けぶりたちたつ

5    海原は 鴎立ち立つ       うなはらは かまめたちたつ

    うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は うましくにぞ あきづしま やまとのくには

 

意味:

1    日本国には 多くの山々があるけれど

2    精霊の神々しくより付く 天の香具山に

3    高いところに登り立って 国民の生活状態や国情などを見わたせば

    広々とした平野には 炊事の煙が立って4

5    広々とした海には かもめがあちこち飛び交っている

6    ほんとうに良い国である 蜻蛉島 大和の国は

作者:

舒明天皇(じょめいてんのう)舒明天皇は、天智天皇と天武天皇の父親にあたる。この歌は、万葉集の2番目の歌で非常の有名な歌です。この歌のタイトルは「天皇、香久山に登りて国を望たまう時の御製歌」となっている。よって場所は、香久山の上で歌った歌ということである。「海原は 鴎立ち立つ」とあるが、海は見えなかったと思われる。遠目に海が見えたとしても鴎は見えなかっただろうから想像してのことですが、対句になっていることが素晴らしいです。蜻蛉島は、日本の別称です。

カモメは香久山から見えなかったとすれば、内陸まで飛ぶことのあるウミネコが見えたのではないかという説もあるが、嘴の先でしか区別のできないカモメとウミネコが山の上から区別できるわけはない。

ウミネコ