第17巻3971

山吹の 茂み飛び潜く 鴬の 声を聞くらむ 君は羨しも

 

やまぶきの しげみとびくく うぐひすの こゑをきくらむ きみはともしも

意味:

山吹の花の 茂みで飛んで潜っている ウグイスの 声を今頃は聞いているだろう 君はうらやましいよ

作者:

大伴宿祢家持(おおとものすくねやかもち)この歌は、大伴宿祢家持が再度、大伴宿祢池主に贈った長歌395に対する反歌3首のなかの2番目の歌です。「君はうらやましいよと」いうのは自分が病気で臥せっていることを考えてのことです。

 

第17巻4030

鴬は 今は鳴かむと 片待てば 霞たなびき 月は経につつ

 

うぐひすは いまはなかむと かたまてば かすみたなびき つきはへにつつ

意味:

ウグイスが 鳴くのを今か今かと ひたすら待っていると 霞がたなびいて 月は過ぎて行く

作者:

大伴宿祢家持(おおとものすくねやかもち)ウグイスが鳴くのを待っているときの歌です。楽しみの少ない時代ですから、自然の中の鳥の声を待つことも楽しみの一つだったのですね。ただ、この夜は鳴かなかったのかもしれません。

 

第19巻4166

(この歌は18.12章にも出てきました。内容は同じです。)

   時ごとに いやめづらしく         ときごとに いやめづらしく

2   八千種に 草木花咲き           やちくさに くさきはなさき

3   鳴く鳥の 声も変らふ           なくとりの こゑもかはらふ

   耳に聞き 目に見るごとに         みみにきき めにみるごとに  

5   うち嘆き 萎えうらぶれ          うちなげき しなえうらぶれ

6   偲ひつつ 争ふはしに           しのひつつ あらそふはしに

7   木の暗の 四月し立てば          このくれの うづきしたてば

8   夜隠りに 鳴く霍公鳥           よごもりに なくほととぎす

9   いにしへゆ 語り継ぎつる         いにしへゆ かたりつぎつる

10  鴬の 現し真子かも            うぐひすの うつしまこかも

11  あやめぐさ 花橘を            あやめぐさ はなたちばなを

12  娘子らが 玉貫くまでに          をとめらが たまぬくまでに

13  あかねさす 昼はしめらに         あかねさす ひるはしめらに

14  あしひきの 八つ峰飛び越え        あしひきの やつをとびこえ

15  ぬばたまの 夜はすがらに         ぬばたまの よるはすがらに

16  暁の 月に向ひて             あかときの つきにむかひて

17  行き帰り 鳴き響むれど なにか飽き足らむ ゆきがへり なきとよむれど なにかあきだらむ

 

意味:

   時毎に いや、すばらしく

2   たくさんの 草木に花が咲き

3   鳴く鳥の 声も変わる

   耳に聞き 目に見るごとに

5   溜息をつき 深く心打たれて

6   あれも良いこれも良いと 心で決めかねているうちに

7   木の下の暗い所で 四月になれば

8   夜遅く 鳴くホトトギス

9   遠い昔から 語り継がれる

10  ウグイスの まさに子そのものかも

11  菖蒲草と 花橘を

12  乙女らが 玉貫くまでに

13  美しく照り輝く 昼は休みなく

14  麓を長く引いた 八つ峰飛び越え

15  真っ暗な 夜はづっと

16  夜明け前の 月に向って

17  行ったり来たりして 鳴き声を響かすけれども なにか飽きてしまうことなどないだろう

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは「ホトトギスに合わせて時の花を読む歌」となっています。

 

第19巻4277

袖垂れて いざ我が園に 鴬の 木伝ひ散らす 梅の花見に

 

そでたれて いざわがそのに うぐひすの こづたひちらす うめのはなみに

意味:

袖を垂らして さあ私の庭に ウグイスが 木を伝いながら散らす 梅の花見に行きましょう

作者:

藤原永手(ふじわらのながて)藤原不比等の子供の藤原4兄弟のうちの次男の藤原 房前の次男。万葉集に藤原永手の歌はこの1首のみです。

 

第19巻4286

御園生の 竹の林に 鴬は しば鳴きにしを 雪は降りつつ

 

みそのふの たけのはやしに うぐひすは しばなきにしを ゆきはふりつつ

意味:

庭園の 竹の林に ウグイスは しばしば鳴いて 雪は降りつづいた

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは、十一日に大雪が降り積みて、尺に二寸あり。よって自分の思いを述べる歌となっている。

 

第19巻4287

鴬の 鳴きし垣内に にほへりし 梅この雪に うつろふらむか

 

うぐひすの なきしかきつに にほへりし うめこのゆきに うつろふらむか

意味:

ウグイスの 鳴く屋敷に におっている 梅の香はこの雪に 今ごろは移っているだろうか

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)いこの歌のタイトルは、十一日に大雪が降り積みて、尺に二寸あり。よって自分の思いを述べる歌となっている。前の8286番の歌と同じグループの歌です。

第19巻4290

春の野に 霞たなびき うら悲し この夕影に 鴬鳴くも

 

はるののに かすみたなびき うらがなし このゆふかげに うぐひすなくも

意味:

春の野に 霞がたなびき うら悲しい この夕日の光の中で ウグイスが鳴くことよ

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌のタイトルは、23日に興に依りて作る歌になっている。

 

第20巻4445

鴬の 声は過ぎぬと 思へども しみにし心 なほ恋ひにけり

 

うぐひすの こゑはすぎぬと おもへども しみにしこころ なほこひにけり

意味:

ウグイスの 声が聞こえる時期は過ぎたと 思ったが 深く心に止まり なおウグイスを恋している 

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌にタイトルは、すなわちウグイスの鳴く聞きて作る歌となっています。

 

第19巻4488

み雪降る 冬は今日のみ 鴬の 鳴かむ春へは 明日にしあるらし

 

みゆきふる ふゆはけふのみ うぐひすの なかむはるへは あすにしあるらし

意味:

美しい雪が降る 冬は今日限り ウグイスの 鳴く春は 明日からでしょう

作者:

三形王(みかたおう)三形王は、舎人親王の孫らしい。舎人親王は天武天皇の皇子で、長屋王に近い。三形王の歌は、万葉集に2首あります。

 

第20巻4490

あらたまの 年行き返り 春立たば まづ我が宿に 鴬は鳴け

 

あらたまの としゆきがへり はるたたば まづわがやどに うぐひすはなけ

新しい 年に改まり 春になれば まず私の家に ウグイスは鳴くよ

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)

 

第20巻4495

うち靡く 春ともしるく 鴬は 植木の木間を 鳴き渡らなむ

 

うちなびく はるともしるく うぐひすは うゑきのこまを なきわたらなむ

意味:

草が風になびく 春まさにそのとおりになり ウグイスは 植えてある木と木との間を 鳴きながら渡るだろう

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)