第10巻1826
春されば 妻を求むと 鴬の 木末を伝ひ 鳴きつつもとな
はるされば つまをもとむと うぐひすの こぬれをつたひ なきつつもとな
意味:
春になると 妻を求めんと ウグイスは 樹木の先端の部分をつたって しきりに鳴きます
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1829
梓弓 春山近く 家居れば 継ぎて聞くらむ 鴬の声
あづさゆみ はるやまちかく いへをれば つぎてきくらむ うぐひすのこゑ
意味:
梓弓 春の山の近くの 家にいれば 連続して聞こえます ウグイスの声が
作者:
この歌の作者は不明です。梓弓は梓で作った弓は狩猟のほか、祭りにも用いられましたが、ここでは春(張る、弓を張る)にかかる枕ことばになっています。梓弓を形容詞として訳すのも困難ですので、そのままにしました。
第10巻1830
うち靡く 春さり来れば 小竹の末に 尾羽打ち 触れて鴬鳴くも
うちなびく はるさりくれば しののうれに をはうちふれて うぐひすなくも
意味:
草や髪などが風になびく 春が来れば 笹の茎や葉の先に 尾羽を打ち 触れてウグイスがなくよ
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1837
山の際に 鴬鳴きて うち靡く 春と思へど 雪降りしきぬ
やまのまに うぐひすなきて うちなびく はるとおもへど ゆきふりしきぬ
意味:
山の端に ウグイスが鳴いて 草や髪などが風になびく 春が来たかと思ったが 雪がしきりに降ってしまった
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1840
梅が枝に 鳴きて移ろふ 鴬の 羽白妙に 沫雪ぞ降る
うめがえに うぐひすの はねしろたへに あわゆきぞふる
意味:
梅の枝に 鳴きながら移動する ウグイスの 羽が白くなり 淡雪が降る
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1845
鴬の 春になるらし 春日山 霞たなびく 夜目に見れども
うぐひすの はるになるらし かすがやま かすみたなびく よめにみれども
意味:
ウグイスの鳴く 春になるらしい 春日山は 霞がたなびいている 夜目に見てもそれがわかります
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1850
朝な朝な 我が見る柳 鴬の 来居て鳴くべく 森に早なれ
あさなさな わがみるやなぎ うぐひすの きゐてなくべく もりにはやなれ
意味:
毎朝毎朝 私が見る柳の木 ウグイスが 来ていて鳴けるように 森に早くなっておくれ
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1854
鴬の 木伝ふ梅の うつろへば 桜の花の 時かたまけぬ
うぐひすの こづたふうめの うつろへば さくらのはなの ときかたまけぬ
意味:
ウグイスが 枝から枝へと移り渡る梅の 色があせれば 桜の花の咲く季節がやって来ます
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1873
いつしかも この夜の明けむ 鴬の 木伝ひ散らす 梅の花見む
いつしかも このよのあけむ うぐひすの こづたひちらす うめのはなみむ
意味:
今すぐにでも この夜が明けて ウグイスが 枝から枝えと移りながら 散らす梅の花を見たいものだ
作者:
この歌の作者は不明です。
第10巻1888
白雪の 常敷く冬は 過ぎにけらしも 春霞 たなびく野辺の 鴬鳴くも
しらゆきの つねしくふゆは すぎにけらしも はるかすみ たなびくのへの うぐひすなくも
意味:
白雪が いつでも敷き詰められている冬は 過ぎたようだ 春霞が たなびく野辺に ウグイスが鳴いている
作者:
この歌の作者は不明です。この歌は、577577の形式になっていますので、旋頭歌です。