第10巻1960

物思ふと 寐ねぬ朝明に 霍公鳥 鳴きてさ渡る すべなきまでに

 

ものもふと いねぬあさけに ほととぎす なきてさわたる すべなきまでに

意味:

物思いで 寝られぬ朝の明け方 ホトトギスが 鳴いて渡って行く どうしたらよいかわからないな

作者:

この歌の作者は不明です。どうしたらよいかわからないというのは、この物思いしていることがどうするべきかわからないということです。

 

第10巻1961

我が衣を 君に着せよと 霍公鳥 我れをうながす 袖に来居つつ

 

わがきぬを きみにきせよと ほととぎす われをうながす そでにきゐつつ

意味:

私の着物を 君に帰せよと ホトトギスが 私に促し 袖のところに来て居ます

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1962

本つ人 霍公鳥 をやめづらしく 今か汝が来る 恋ひつつ居れば

 

もとつひと ほととぎす をやめづらしく いまかながくる こひつつをれば

 

意味

お前は昔なじみの ホトトギスだ おや、一年ぶりで 今あなたが来る 恋しく思っていると 

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1963

かくばかり 雨の降らくに 霍公鳥 卯の花山に なほか鳴くらむ

 

かくばかり あめのふらくに ほととぎす うのはなやまに なほかなくらむ

意味:

これほどに 雨が降ってしまったのに ホトトギスが 卯の花山で なお鳴いているよ 

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1968

霍公鳥 来鳴き響もす 橘の 花散る庭を 見む人や誰れ

 

ほととぎす きなきとよもす たちばなの はなちるにはを みむひとやたれ

意味:

ホトトギスが 来て鳴いて声を響かせてる 橘の 花散る庭を 見る人は誰でしょうか

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1976

卯の花の 咲き散る岡ゆ 霍公鳥 鳴きてさ渡る 君は聞きつや 

 

うのはなの さきちるをかゆ ほととぎす なきてさわたる きみはききつや

意味:

卯の花の 咲いて散る岡の ホトトギスは 鳴いて渡って行く 君は聞いただろうか

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1977

聞きつやと 君が問はせる 霍公鳥 しののに濡れて こゆ鳴き渡る

 

ききつやと きみがとはせる ほととぎす しののにぬれて こゆなきわたる

意味:

聞いたかと あなたが問われる ホトトギスは ぐっしょりと濡れて 大きな声で鳴きながら飛んで行きます 

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1978

橘の 花散る里に 通ひなば 山霍公鳥 響もさむかも

 

たちばなの はなちるさとに かよひなば やまほととぎす とよもさむかも

意味:

橘の 花の散る里に 通へば 山ホトトギスの 鳴き声が辺りに響き渡るでしょう

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1979

春されば すがるなす野の 霍公鳥 ほとほと妹に 逢はず来にけり

 

はるされば すがるなすのの ほととぎす ほとほといもに あはずきにけり

意味:

春になり 似我(ジガ)蜂が発生した野のような ホトトギズを見て すんでのところで恋人に 逢わずに来てしまったよ

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1980

五月山 花橘に 霍公鳥 隠らふ時に 逢へる君かも

 

さつきやま はなたちばなに ほととぎす こもらふときに あへるきみかも

意味:

さつき山の 花橘に ホトトギスが 繰り返し隠れるときに 逢える君かもしれません

作者:

この歌の作者は不明です。