第10巻1939

霍公鳥 汝が初声は 我れにもが 五月の玉に 交へて貫かむ

 

ほととぎす ながはつこゑは われにもが さつきのたまに まじへてぬかむ

意味:

ホトトギスよ あなたの初声は 私に是非ください 5月の節句の薬玉をつくるとき あなたの声を混ぜて作ります 

作者:

この歌の作者は不明です。5月の節句の薬玉のことは何度も出てきますが、節句のときに香料を入れた袋に菖蒲などの花を刺して薬玉にするというものです。この時にホトトギスの声を一緒に入れるという習慣があったようです。実際にホトトギスの声を交えることはできませんので、ホトトギスが鳴いているところで薬玉を作るという意味でしょう。

 

第10巻1940

朝霞 たなびく野辺に あしひきの 山霍公鳥 いつか来鳴かむ

 

あさかすみ たなびくのへに あしひきの やまほととぎす いつかきなかむ

意味:

朝霞の たなびく野原で 裾を長く引いた 山のホトトギス いつか来て鳴くでしょう

作者:

この歌の作者は不明です。景色が見えるようで、自然な素晴らしい歌です。

 

第10巻1942

霍公鳥 鳴く声聞くや 卯の花の 咲き散る岡に 葛引く娘女

 

ほととぎす なくこゑきくや うのはなの さきちるをかに くずひくをとめ

意味:

ホトトギスの 鳴く声が聞こえるよ 卯の花の 咲いて散る岡に 葛の蔓を引く若い女性

作者:

この歌の作者は不明です。葛の蔓からは、葛布が作られるという。

 

 

第10巻1943

月夜よみ 鳴く霍公鳥 見まく欲り 我れ草取れり 見む人もがも

 

つくよよみ なくほととぎす みまくほり われくさとれり みむひともがも

意味:

月夜を理解して 鳴くホトトギスを 見たいと思う 私は草を取っている 一緒に見るてくれる人が欲しい

作者:

この歌の作者は不明です。この歌も夜鳴くホトトギスを歌っています。

 

第10巻1944

藤波の 散らまく惜しみ 霍公鳥 今城の岡を 鳴きて越ゆなり

 

ふぢなみの ちらまくをしみ ほととぎす いまきのをかを なきてこゆなり

意味:

風に揺れる藤の花房が 散るのを惜しんで ホトトギスは 今城の岡を 鳴いて超えて行く

作者:

この歌の作者は不明です。今城の城の場所は不明です。

 

第10巻1945

朝霧の 八重山越えて 霍公鳥 卯の花辺から 鳴きて越え来ぬ

 

あさぎりの やへやまこえて ほととぎす うのはなへから なきてこえきぬ

意味:

朝霧の 八重山を越えて ホトトギスが 卯の花の辺りから 鳴いて越えてくる

作者:

この歌の作者は不明です。ホトトギスとお決まりの卯の花がセットになってます。

 

第10巻1946

木高くは かつて木植ゑじ 霍公鳥 来鳴き響めて 恋まさらしむ

 

こだかくは かつてきうゑじ ほととぎす きなきとよめて  ひまさらしむ

意味:

高い木は 決して木を植えないよ ホトトギスが 飛んで来て鳴き響かせて 恋の焦燥を募らせるので

作者:

この歌の作者は不明です。「かつて」は「決して」の意味で、「木植ゑじ」の「じ」は否定の意味です。

 

第10巻1947

逢ひかたき 君に逢へる夜 霍公鳥 他時よりは 今こそ鳴かめ

 

あひかたき きみにあへるよ ほととぎす ことときよりは いまこそなかめ

意味:

なかなか逢うことができない 君に逢える夜 ホトトギスよ 別の時でなく 今こそ鳴いておくれ

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1948

木の暗の 夕闇なるに [なれば] 霍公鳥 いづくを家と 鳴き渡るらむ

 

このくれの ゆふやみなるに[なれば] ほととぎす いづくをいへと なきわたるらむ

意味:

木が茂る場所で 夕闇になると ホトトギスは どこを家として 鳴き渡るのか

作者:

この歌の作者は不明です。

 

第10巻1949

霍公鳥 今朝の朝明に 鳴きつるは 君聞きけむか 朝寐か寝けむ

 

ほととぎす けさのあさけに なきつるは きみききけむか あさいかねけむ

意味:

ホトトギスが 今日の朝はやく 鳴いたのを あなたは聞きましたか または、朝遅くまで寝ていましたか  

作者:

この歌の作者は不明です。