第18巻4043
明日の日の 布勢の浦廻の 藤波に けだし来鳴かず 散らしてむかも[霍公鳥]
あすのひの ふせのうらみの ふぢなみに けだしきなかず ちらしてむかも [ほととぎす]
意味:
明日の 布勢の浦の廻りの 揺れる藤の花に ひょとすると来て鳴かないまま 散らしてしまうことにならないか [ホトトギスよ]
作者:
大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)布勢の海(布勢の浦)は、現在の富山県氷見市の十二町潟の近く、大伴家持は、この近くに赴任していて、良くここで遊んだ。 [霍公鳥]は1句目を置き替えるものです。
第18巻4050
めづらしき 君が来まさば 鳴けと言ひし 山霍公鳥 何か来鳴かぬ
めづらしき きみがきまさば なけといひし やまほととぎす なにかきなかぬ
意味:
珍しい 人が来たら 鳴けと言っておいたが 山ホトトギスは 何故来て鳴かないのか
作者:
久米広縄(くめの ひろただ/ひろつな)万葉集では9首の歌が記載されている。現在の富山県の地点の歌が多く、大伴家持との関係が深かったと思われる。
第18巻4051
多古の崎 木の暗茂に 霍公鳥 来鳴き響めば はだ恋ひめやも
たこのさき このくれしげに ほととぎす きなきとよめば はだこひめやも
意味:
多古の埼の 木が暗く茂った場所に ホトトギスが 来て鳴き声を響かせてくれれば こんなにも恋ているだろうか
作者:
大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)
第18巻4052
霍公鳥 今鳴かずして 明日越えむ 山に鳴くとも 験あらめやも
ほととぎす いまなかずして あすこえむ やまになくとも しるしあらめやも
意味:
ホトトギスよ 今鳴かないで 明日越えて行く 山で鳴いても 何の霊験があるだろうか、そんなことはないなあ
作者:
田辺福麻呂(たなべ の さきまろ) 田辺福麻呂の歌は、万葉集に44首ある。これらの歌は田辺福麻呂歌集に記載されているものが多い。
第18巻4053
木の暗に なりぬるものを 霍公鳥 何か来鳴かぬ 君に逢へる時
このくれに なりぬるものを ほととぎす なにかきなかぬ きみにあへるとき
意味:
木の下が暗く なってしまったというのに ホトトギスよ なぜ来て鳴かないか 貴方と会える時に
作者:
久米広縄(くめの ひろただ/ ひろつな)4050と同じ
第18巻4054
霍公鳥 こよ鳴き渡れ 燈火を 月夜になそへ その影も見む
ほととぎす こよなきわたれ ともしびを つくよになそへ そのかげもみむ
意味:
ホトトギスよ ここを通って鳴き渡りなさい 燈火を 月夜に見立てて その影を見ましょう
作者:
大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち) この歌は少し分かり難い歌ですが、宴会の場所に燈火がありますので、この燈火を月に見立てて鳴き渡りなさい、そうすれば燈火の影としてホトトギスが見えると歌っています。空想です。
第18巻4066
卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥 来鳴き響めよ 含みたりとも
うのはなの さくつきたちぬ ほととぎす きなきとよめよ ふふみたりとも
意味:
卯の花の 咲く月になりました ホトトギスよ 来て鳴いて声を響かせなさい 花が蕾の状態でも
作者:
大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)月立ちの意味は、次の月となることです。月立ちはついたち(1日)につながります。
第18巻4067
二上の 山に隠れる 霍公鳥 今も鳴かぬか 君に聞かせむ
ふたがみの やまにこもれる ほととぎす いまもなかぬか きみにきかせむ
意味:
二上山に 隠れる ホトトギスは 今も鳴かないか 君に聞かせたい
作者:
遊行女婦(うかれめ)土師(はにし) 埴輪などを作っていた遊女と思われるが詳細不明。万葉集中に2つの歌がある。
第18巻4068
居り明かしも 今夜は飲まむ 霍公鳥 明けむ朝は 鳴き渡らむぞ
をりあかしも こよひはのまむ ほととぎす あけむあしたは なきわたらむぞ
意味:
このままじっと夜明かししてでも 今夜は飲もう ホトトギスは 明日の朝は 鳴き渡るでしょう
作者:
大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)
第18巻4069
明日よりは 継ぎて聞こえむ 霍公鳥 一夜のからに 恋ひわたるかも
あすよりは つぎてきこえむ ほととぎす ひとよのからに こひわたるかも
意味:
明日からは 連続して聞こえる ホトトギスの鳴き声 この一晩が原因で 恋い慕い続けるかも知れません
作者:
大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)4067、4068が原因で、大伴宿禰家持が土師を恋い続けるようになるかも知れませんという歌です。