真葛原      (まくずはら)

靡く秋風     (なびくあきかぜ)

吹くごとに    (ふくごとに)

阿太の大野の   (あだのおほのの)

萩の花散る    (はぎのはなちる)

意味:

葛の一面に生えている原(京都市東山区北部の円山公園の辺り一帯)を

靡かせる秋風が

吹く度に

奈良県五條市阿田付近の吉野川沿岸の原野の

萩の花が散る

 

葛は、別名で裏見草とも言われ、恨みを込めて歌われることがあります。この歌がそうであるように思います。奈良県五條市阿田付近の吉野川沿岸の原野とは、大津宮で、皇太子の立場を捨てて、兄の前で兄の天智天皇の子(大友皇子)に次の天皇を譲って吉野の宮瀧に隠遁生活している大海人皇子(のちの天武天皇)の住んでいる場所です。

 

この恨みは、大海皇子を考えて歌った歌で、次のように解釈できます。

 

裏見草(恨み)を

靡かせる秋風が

吹く度に

吉野の大海皇子の

恨みがつのる

 

この歌は、この後、大海皇子が大友皇子に対して戦いを起こすこということが、周りで良く感じられていたということを表しています。実際に、大海皇子は、隠遁生活をして兄(天智天皇)の亡くなった1年後に、壬申の乱を起こして、大友皇子を倒して、天皇の地位(天武天皇)を得ています。

 

ハギ:

萩は背丈の低い落葉低木で、秋になると紅紫の小さな生が付く。枝は太くならないで、毎年新しい芽をふき枝を垂れる。万葉集では140首程度の歌があり、万葉集で最も多く歌われてれいる木です。秋の七草にも選ばれている。