妹が名に (いもがなに)
懸けたる桜 (かけたるさくら)
花咲かば (はなさかば)
常にや恋ひむ (つねにやこひむ)
いや年のはに (いやとしのはに)
意味:
恋人の名前に
付けた桜
花が咲けば
いつでも恋しい
やあ、来る年も来る年も毎年
作者:
この万葉碑には、作者の部分に「壮士」と記載がありますが、これは「男」という意味で実際の作者は不明です。「壮士」は次のような物語の文章で使う言葉です。読み方も「おとこ」です。
昔、男ありけり
↓
昔、壮士ありけり
万葉集の16巻では物語や伝説に関係した内容が歌にされているものが集められています。
この巻16の3787の歌の原因になった物語は次のようなもので、この歌の前に記載されています。
「むかし、娘子(おとめ)あり。字(あざな)を桜児(さくらこ)という。時に二人の壮士あり。ともにこの娘子に結婚を申し込んで、命を捨てて争い、死も辞さないで相戦った。ここに娘は嘆いていう。「いにしえより、今に至るまで、いまだ聞かず、いまだ見ず。ひとりの女の身が二つの門に行くということを。今まさに、荘子(おのこ)の心、戦いをやめ、仲直りすることができない。互いに殺しあうことを永く止めさせるには、私が死ぬことしかない。」即座に、林の中に分け入り、木に首を釣ってやがて死ぬ。この二人の壮士は悲しみに耐えられない。血の涙が衿に流れる。ここで、ひとりの壮士が作った歌がこの歌です。
もう一人の壮士の作った歌は次の通りです。
巻⑯1786
春さらば (はるさらば)
かざしにせむと (かざしにせむと)
我が思ひし (わがもひし)
桜の花は (さくらのはなは)
散りにけるかも (ちりにけるかも)
意味:
春になって
髪飾りにしようと
私が思った
桜の花は
散ってしまった