第19巻4144

燕来る 時になりぬと 雁がねは 国偲ひつつ 雲隠り鳴く

 

つばめくる ときになりぬと かりがねは くにしのひつつ くもがくりなく

意味:

ツバメが来る 時になったと 雁は 故郷を思いつつ 雲に隠れて鳴く 

 

作者:

大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)この歌には、帰雁を見る歌というタイトルが付けられている。ツバメは夏鳥で日本で越冬するものもいますが、通常は暖かくなったころ日本にやって来て子育てを行います。これに対して、雁は、冬鳥で温かくなるとシベリア方面に渡ってしまいます。この歌は、ツバメの来る春になると、雁は、故郷を思い出し雲の間を鳴きながらシベリア方面に去ってゆく状況を歌っています。これまで出てきた万葉集の鳥の歌では、ちょっと見かけた野鳥の動作を人間の行動に掛けて使うようなものが多かったですが、この歌は珍しく野鳥自身を歌にしているという珍しい歌です。ツバメの歌が万葉集で一つしかないのは歌にするのが難しい鳥であったことを示していますが、大伴家持は、こんな形で歌にしてしまいました。鳥を観察する力も優れていたから出来た歌だと思います。

地上に降りた子ツバメ